人工環境と自然環境の統合に向けたCesiumの技術ロードマップ
本記事は、2025年6月23日にShehzan Mohammedによってリリースされた記事を、今回日本語化したものです。
CesiumがBentley Systemsの一員となってから約9ヶ月が経ちました。この間、私たちはBentleyの技術を深く理解し、それをコミュニティにどのように還元できるかを探ってきました。今回、初のCesium Developer Conferenceを機に、皆さまからのご意見を広くいただくべく、iTwinによるデジタルツイン機能をCesiumに統合するためのロードマップ案を共有します。
当社のミッションは、「人工環境と自然環境が融合する3D地理空間体験をコミュニティが自由に構築できるようにすること」です。3D Tilesの活用は着実に拡大しており、Google、Esri、Ansys、FOX Sports、 The Weather Company、 GE Aerospace、 MathWorks、 CAE、 Trimble、 そして DroneDeployなど、多くの企業に採用されています。Cesium ionも月間30,000人以上のアクティブ・ユーザーから3億回以上のリクエストを受けています。Cesiumはオープンソースへの継続的な投資を通じて、コミュニティの拡大とともに、CesiumJS、Cesium for Unreal、Cesium for Unity、Cesium for Omniverseといったランタイムエンジンを活用し、新たな3D地理空間アプリケーションの迅速な開発を可能にし続けています。
また、現在以下のようなニーズに限りないほどの強い需要がある状況です。
- より厳選されたデータ
- 多様な入力形式に対応する高性能なタイル変換パイプライン
- より効率的なエンドツーエンドのワークフロー支援ツール
- 全体の処理性能の向上
Bentleyの一員として、私たちはBentleyの最先端技術を活用し、3D地理空間コミュニティ全体を根本的に強化・拡大していく機会を得ています。
Cesiumはこれまでも常にコミュニティの声を指針としてきました。今回のロードマップに掲げたテーマについても、皆さんのフィードバックをぜひお寄せください:
- 3D Tilesとオープン標準の進化
- リアリティモデリングおよびAI解析サービスのCesium ionへの統合
- iTwinプラットフォームAPI/サービスをCesium経由で利用可能にする
- データを3D Tilesとして最適化するための柔軟に構成可能な(composable)タイル処理パイプラインの導入
- 新3D Tilesへの拡張やプラットフォーム統合に対応したCesiumランタイムエンジンの進化
- 高品質な整備済みの地形・都市・惑星データ提供をさらに拡充
- 再利用可能でカスタマイズ可能なUXツールとウィジェットの提供
- 学習教材の充実と継続的なメンテナンス強化
時間変化に対応する3D Tiles
あらゆる業界のユーザーが、これまでになく高解像度かつ高頻度で、さまざまな種類のデバイスを使って環境をキャプチャするようになっています。
このような指数関数的なスケーリングの進展は、空間的整合性を保ちつつ、時間とともに更新される3D地理空間データを、より効率的に保存・ストリーミング・可視化・分析できるよう、3D Tiles仕様を拡張する絶好の機会を生み出しています。
時系列対応 3D Tilesは、3D Tilesに時間軸の概念を効率的に組み込むための拡張仕様です。
これを使えば、1つのタイルセットを時間の経過とともに更新でき、各キャプチャで変更があった部分のタイルだけを差分更新することが可能になります。
もはや、更新のたびに完全な新しいタイルセットを作り直す必要はありません。
1つのタイルセットに変更履歴を保持しながらインクリメンタルに更新できるため、再生成の効率も速度も大幅に向上します。
この仕組みは、時間に沿った変更点の分析や、タイルセットと設計モデルの時系列比較といった分析ワークフローにも活用可能です。 詳細や意見交換はGitHubのIssueページ にて。

時系列対応3Dタイルを使えば、1つのタイルセットを時間の経過に沿って更新でき、各キャプチャごとに影響を受けたタイルだけを差し替えることが可能になります。
さらに現在、BentleyのSYNCHRO 4D Schedule APIと連携し、時間変化に対応する3D Tilesetを生成する手法も検討しています。
SYNCHRO 4D Schedule APIは、時間軸を含んだプロジェクトデータをWeb経由で取得・活用できる仕組みを提供しており、この連携により、時間的に変化するジオメトリと業務インテリジェンスとの融合が実現されます。
ボクセルによるボリューム(体積)データ表現
地質学、海洋学、気候科学など、連続的なデータ表現が求められる多くの分野において、ボリュームデータは現実世界を可視化する重要な手法となっています。
3D Tiles仕様は、大規模かつ多様なデータを最適に表現できるよう、さまざまなジオメトリ形式を柔軟にサポートするよう設計されています。
3D Tilesにボクセル(体積要素)を3Dペイロードとして導入することで、地球規模のボリュームデータを扱うアプリケーションの構築が可能になります。
現在私たちは、glTFをボクセルのペイロード形式として活用しながら、楕円体・直方体・円柱型のボクセルを3D Tiles仕様の出発点として開発を進めています。
これにより、地中・地表・大気・宇宙空間など、さまざまな領域における体積データの表現と活用が可能になります。
詳細はVoxels拡張仕様のドラフトをご覧ください。

CesiumJSでボクセルを使用して、メキシコ湾の海水温を表現

CesiumJSでボクセルを使用して、メキシコ湾の海水温を表現
3D Gaussian Splats(3Dガウシアン・スプラット)
近年のコンピュータグラフィックス分野で最も注目を集めている技術の一つが、3D Gaussian splats(3Dガウシアン・スプラット)です。
高解像度のリアリティメッシュや点群は、自然環境のデジタル化に非常に優れた手段ですが、ケーブル、樹木、鉄棒、通信塔といった一部の情報の捉え方には限界があります。
その点、3D Gaussian splats は、極めて高い再現性を保ちつつ、視覚的なディテールを精緻に再現できる優れたソリューションであることが証明されています。
私たちは現在、3D Tilesのペイロードタイプのひとつとして3D Gaussian splatsを追加することに取り組んでいます。
これに伴い、iTwin Captureで使われている技術をCesium ionに統合し、Gaussian splatsのモデリングとタイル化を可能にする計画も進めています。
さらに、glTFコミュニティと連携し、glTFに対応した3D Gaussian splat拡張仕様の策定にも取り組んでいます。

3D Tilesで表現した3D Gaussian splats(左)と、Reality Mesh(右)との比較。特にワイヤー、パラボラアンテナ、支柱、足場といった細長い形状の表現力に注目。

3D Tilesで表現した3D Gaussian splats(左)と、Reality Mesh(右)との比較。特にワイヤー、パラボラアンテナ、支柱、足場といった細長い形状の表現力に注目。

glTFの EXT_mesh_primitive_edge_visibility 拡張を用いてエッジをハイライト表示した、iTwin.js 上の3D Tilesetの例。
暗黙面(Implicit Surfaces)
暗黙面を使うことで、パイプ、柱、梁、ボックス、球体、円柱といったパラメトリック(数式で定義される)形状を表現できるようになります。
さらに、他の暗黙面と組み合わせて使用することで、三角形メッシュでは表現が難しい複雑なジオメトリの作成も可能になります。
この手法の主な利点は、ストレージ効率の向上と解析精度の向上にあります。
というのも、これらの面は三角形メッシュによって近似されるのではなく、数学的に厳密な形状として保持・描画されるため、ジオメトリ的な誤差が発生しないのです。
私たちは現在、Microsoftが導入した glTF の暗黙的形状拡張(implicit shapes extension)を基盤として、この機能の実装を進めています。
3D TilesにおけるBISセマンティクス(意味情報)の対応
3D Tiles仕様は、ジオメトリに属性や分類情報を付加する詳細なメタデータをサポートしています。このメタデータ仕様は、さまざまな粒度・産業・ユースケースに対応したセマンティクス(意味情報)を付与できるように設計されています。
とくに建築・エンジニアリング・建設(AEC)業界においては、オブジェクトのクラス(種類)に適用可能な標準化された分類語彙(タクソノミー)の整備が求められています。こうした分類の意味を標準語彙として明示的に定義しておくことで、AI によるデータ検証、データ連携、分析、インタラクションなどにおいて、後続処理に有効活用できるようになります。
たとえば、ユーザー独自スキーマ内の「あるクラス」が 「ドア(door)」 を表している場合、それを IFC(Industry Foundation Classes)、Uniclass、あるいは BIS などの標準語彙に対応づけておけば、他のデータ利用者が容易に扱うことが可能になります。
BIS(Base Infrastructure Schema)は、インフラ工学分野のフェデレーションデータをモデリングするための分類体系、データ構造、関係性を表すモジュール式スキーマ群です。これらの BIS スキーマはレイヤー構造で編成されており、大部分は BIS エコシステムにおける標準的なルールやパターンを定義しています。標準的なBISスキーマに組み込まれたセマンティクス(意味情報)は、iModelの枠を超えたさまざまな分野でも有用であることが証明されています。
現在私たちは、クラス(分類)を扱えるようにするためのメタデータセマンティクス拡張を3D Tiles向けに開発しており、BISをはじめとする同様のセマンティック語彙体系を適切にエンコードできるように取り組んでいます。
Cesium ion へのリアリティモデリングと AI 解析サービスの統合
Cesium が Bentley の一員となったことによる最もエキサイティングな成果のひとつが、リアリティモデリングと AI を活用した解析サービスを Cesium ion に統合できるようになったことです。
「写真をアップロードして 3D モデルを生成したい」という声はこれまでにも多く寄せられており、私たちは、業界をリードする iTwin Capture のリアリティモデリング技術をCesium ion に統合することで、ついにそれを実現できることをとても嬉しく思っています。
写真から 3D Tiles を生成し、さらにそれをレンダリングや解析へとつなげる統合されたエンドツーエンドのパイプラインを通じて、リアリティデータを用いた 3D 地理空間アプリケーションにおいて、最高水準のユーザー体験を提供することを目指しています。
さらに、3D Gaussian splats の技術進化により、写真からスプラット形式の 3D タイルセット を生成するワークフローもサポートできるようになります。

iTwin Captureで使われているリアリティモデリング技術を活用し、Cesium ionにReality Modeling機能が加わったことで、写真データから直接3D Tilesを作成できるようになりました。
AIの特徴検出機能を使ったリアリティ解析
Bentley は、AI を活用して現実世界のデータからオブジェクト、関心領域(ROI)、欠陥などを識別する技術も開発しています。
Cesium ion にリアリティ解析機能を統合することで、ユーザーが現実空間に対して 3D セグメンテーションや分類を適用できるようにすることを目指しています。この分析機能は、次の2つの形で提供される予定です。
- 3D タイルセット内に埋め込まれたメタデータ:実行時にクエリ、スタイリング、フィルタリングが可能になります。
- 現実データから抽出されたフィーチャとしての補足的なベクターデータ:オーバーレイや注釈、スタイリングなどに活用できます。
リアリティ解析の結果をすべての実行環境で活用できるよう、Cesiumのネイティブプラグインにベクターデータの対応機能を追加しています。
その結果、現実データから実世界のインサイトを引き出し、データに基づく意思決定を支援できるようになります。

AIによるリアリティ解析で分類された点群の 3D Tileset 表示例。
最初のリリースでは、リアリティメッシュおよび点群データに対する解析機能を提供します。厳選された解析用検出器のラインアップを順次拡充していくことで、さまざまな解析オプションをご利用いただけるようになります。
解析は、すでに ion にアップロードされているモデルに対しても、ion の新しいリアリティモデリング機能で生成したモデルに対しても実行でき、効率的なエンドツーエンドのワークフローを実現します。
提供される検出器には、樹木、鉄道関連オブジェクト、都市要素のセグメンテーション解析などが含まれます。
将来のリリースでは、ion 上で実行可能なカスタム検出器をユーザー自身が作成できるようになる予定です。また、Gaussian Splat に対する 3D 解析や、写真コレクションに対する 2D セグメンテーション、さらに Cesium ion Self-Hosted 環境での解析機能の提供も計画しています。
Cesiumを通じた iTwin Platform API およびサービスの提供
iTwin Platform は、世界中のインフラを設計・建設・運用するために活用されている AEC(建築・エンジニアリング・建設)分野向けのデジタルツインソリューションの基盤です。
iTwinとCesiumのプラットフォームを連携させることで、人工環境と自然環境の両方に対応した包括的なデジタルツイン体験を提供することを目指しており、オープンソース、オープンスタンダード、オープンAPIへの強いコミットメントを持って取り組んでいます。
iTwinプラットフォームのAPIやサービスをCesiumのチャネルを通じて活用できるようになることで、設計レビューにおける干渉チェック、設計変更の追跡、カーボン計算などの分析、さらには3Dオブジェクトやエンジニアリング情報、業務ドキュメントにまたがるAIによるフェデレーション検索といった機能が利用可能になります。
また、iTwinプラットフォームの同期サービスを活用すれば、設計モデルに多様な入力を取り込むことが可能になり、それらを3D TilesとしてCesiumアプリに追加することができます。

iTwin.js 上で表示された干渉チェックと設計レビューの実例
データを3D Tilesとして最適化するための構成可能なタイル処理パイプラインの導入
3D Tilesを生成するタイル処理パイプラインは、ほとんどのユースケースにおいて不可欠となる「自社データを3D地理空間アプリケーションに取り込む」ことを可能にします。これまで Cesium は、リアリティデータ、点群、設計モデル、3D建物、地形、画像データなど、さまざまなタイプのデータに対応するパイプラインを開発・導入してきました。
これらのパイプラインはいずれも技術的に優れていますが、入力データの種類ごとに分断(サイロ化)されているのが現状です。
Bentleyが提供する現実空間データやAEC設計モデル向けのパイプラインを加えることで、さらに多様なタイル処理・最適化アルゴリズムが利用可能になりますが、これらもまた同様にサイロ化された構造になっています。
そこで私たちが構想しているのが、柔軟に構成可能な(composable)タイル処理パイプラインの実現です。
これは、データ変換・タイル化・最適化といった処理ステージを統一・モジュール化し、プラグインベースで柔軟に構成できる新しい仕組みです。処理ステージの例としては、入力ファイル形式の変換、座標系の変換処理、メッシュの簡略化、テクスチャの簡素化、タイル方式の選択、テクスチャのアトラス化(複数テクスチャの一枚化)、メッシュおよびテクスチャの圧縮、メタデータの処理、差分更新、3D Tiles間での最適化処理、そして出力の検証などが含まれます。
これらのステージはグラフ構造によって接続され、用途に応じて自由に組み合わせることができるようになります。また、すぐに使える標準的なパイプラインもすべてのユーザーに提供されます。
AECデータ → 3D Tiles ワークフローの強化
Cesium の Design Tiler や、Autodesk Revit 向けの Cesium ion アドインは、コミュニティから非常に好評を得ており、さらに多くの設計アプリや機能への対応を求める声も多数寄せられています。
Bentley の技術を取り入れることで、私たちは AEC データ向けワークフローを以下の主要な点でさらに進化させようとしています:
- Navisworks、MicroStation、SketchUp など、他のCADフォーマットから3D Tilesへの対応を拡充。
- 設計中や更新時に、モデル全体ではなく変更箇所のみをタイル化できる「増分タイル処理(インクリメンタル・ニアリアルタイムタイル化)」の機能を追加予定。これにより、常に設計モデルと連携した3D Tilesetを維持でき、設計・可視化サイクルを大幅に短縮可能になります。
また、設計データを地理空間ビューに同期させる軽量アプリケーションも提供予定。 - さらに、大規模かつ高精細なプロジェクトへの対応を強化するため、Design TilerのLOD(詳細度レベル)生成機能を改良予定。
- メタデータに基づく描画・フィルタリング・検索を活用した、3D Tilesの選択アルゴリズムの高度化も予定

Autodesk Revitで作成された1,000万ポリゴンのAECモデルの三角形メッシュ。CesiumJSで3D Tilesとして表示。
特定のソフトウェアや機能について、対応を希望される場合は、コミュニティフォーラムにぜひご連絡ください。
Cesiumランタイムエンジンの強化:新しい3D Tiles拡張機能と製品統合を最大限に活用するために
Cesiumのオープンソース・ランタイムエンジン -ブラウザ向けのCesiumJSや、Unreal Engine、Unity、NVIDIA Omniverse向けの各種プラグイン -は、ユーザーが最も直接触れ、操作する「プラットフォームの顔」とも言える存在です。今後のランタイムエンジンのロードマップでは、建築環境と自然環境、AEC(建築・エンジニアリング・建設)と地理空間、そしてiTwin PlatformとCesiumの融合をさらに加速させ、開発者とユーザーに対して、より幅広い機能と体験を提供していきます。
ランタイムエンジンにおける最大の進化は、3D Tiles仕様の拡張―3Dガウススプラット、ボクセル、時間変化に対応した3D Tiles、ジオメトリのハイライト、暗黙面 などを実装し、深く統合することです。これらの機能がすべてのランタイムに加わることで、多くの産業やアプリケーションにとって飛躍的な進歩となるでしょう。
また、iTwin PlatformのAPIやサービスと連携したアプリケーション開発のハードルを下げることを目指し、開発者向けのAPIや、iTwinとの統合を簡単に行えるユーザーインターフェースも提供予定です。これにより、iTwinのエンジニアリング情報や業務データをCesiumアプリケーションに統合し、Cesium ionのようなサービスに近い形で、3D地理空間アプリケーションを構築できるようになります。
さらに、上記のような共通のアップデートに加え、各エンジン固有の機能強化も進めていきます。
CesiumJS の進化
- 室内空間、地下、海中などでの没入型アプリケーションに向け、ウォークスルーなどの多様なナビゲーションスタイルを可能にするカメラ操作プリセットのカスタマイズ機能を追加予定。
- ライン描画、ビルボード、全体的なスケーラビリティの改善を含むベクターデータの視覚表現の強化を進行中。
- 同一ランタイム内で複数のビューポート(画面)を最適なストリーミングと選択アルゴリズムによりサポート予定。これにより、建設・設計(AEC)、シミュレーション、運用環境、インフラ点検など、幅広い分野のアプリケーションにメリットを提供。
- 新しい Sandcastle の開発。初心者の導入やプロトタイピング、学習をより簡単にするため、開発者向けの実験・チュートリアル環境である Sandcastle を刷新。
- 今後の展望として、次世代のグラフィックスAPIとして WebGPU の活用を検討。また、Cesium Native を WebAssembly 経由で利用し、3D Tiles の選択・トラバーサル(走査)アルゴリズムの統合を予定。これにより、すべての Cesium ランタイムで再利用可能な共通ライブラリを構築し、より高速な更新と全体的な処理効率の向上を目指す。こうした将来を見据えた技術進化を追求しながらも、CesiumJS のブラウザ・プラットフォーム・デバイス間の幅広い互換性の維持・向上にも継続的な投資と取り組みを続ける予定。

AIによるリアリティ解析で抽出された要素を含む3Dリアリティメッシュを、CesiumJS上で可視化。
Cesium Native、Cesium for Unreal、Cesium for Unity、Cesium for Omniverse
- ランタイム上で3D地理空間シーンに装飾要素(3Dアセット)を追加できるデコレーションシステムを導入します。これにより、開発者は3D Tilesのマテリアルをランタイムで編集したり、木・車・都市の公共設備といった3Dオブジェクトを追加したり、クラウドと同期したり、といった豊かな3D地理空間体験をリアルタイムで構築できるようになります。たとえば、Unreal Engineの「Fabマーケットプレイス」などで提供されている高精細モデルを、現実のキャプチャデータに動的に重ね合わせることが可能になります。
- パフォーマンスの最適化はすべてのランタイムエンジンにおいて永続的な課題ですが、特にリアルタイムゲームをベンチマークとするネイティブランタイムでは重要です。私たちは今後も、レイテンシの低減、ゲームスレッドの効率的活用、メモリ使用量の削減などを通じて、シームレスな体験を実現するためのパフォーマンス向上に継続的に取り組みます。
- さらに、プロジェクトスケジューリングやシミュレーションといったユースケースに対応する時系列対応3D Tilesの導入により、アニメーション・物理エンジン・コントローラなど、ゲームエンジンの機能を活用した拡張も加わります。これにより、周辺環境だけでなく、車両・重機・交通シミュレーション・設備・ツール・IoTデバイスなどを含めた完全なデジタルツインの構築が可能になります。

iTwin のメッシュエクスポートサービスを使用して 3D Tiles に変換された、シンガポールのサッカースタジアムの iModel を Cesium for Unreal 上で可視化。

iTwin のメッシュエクスポートサービスを使用して 3D Tiles に変換された、シンガポールのサッカースタジアムの iModel を Cesium for Unreal 上で可視化。
厳選データの拡充
地理空間アプリケーションの構築にはデータが不可欠ですが、多くの場合そのデータは断片的であったり未加工で、さらにストリーミングやランタイム利用に適していません。私たちは、特に収集が困難な地域を含め、グローバルなデータセットへのアクセス性を高めることで、導入のハードルを下げることを目指しています。そのために、以下の取り組みを進めています:
- Cesium World Terrain のアップグレード:世界各地で新たな高解像度コンテンツを追加
- 月面の高解像度インセットの追加
- 火星向けの惑星規模データセットの提供
- 土地利用分類など、解析に基づくデータセットの提供
さらに、これらの厳選データセットに加えて、Microsoft、Googleなどのエコシステムパートナーとの連携も継続し、Cesium ion を通じてコミュニティにとって有用なデータを継続的に拡充していきます。

Strata ライブラリのコンポーネントを使用して構築された、新しい Sandcastle の代表的なモックアップ
学習コンテンツと継続的なメンテナンスの強化
実践的かつ信頼できる学びは、Cesium の使命の一部です。これまで私たちは、多数のチュートリアルの執筆、数多くのカンファレンス登壇、Sandcastle における数百のコードサンプル提供、そしてフォーラム上で 18,000 件以上のトピックに対するコミュニティとの対話を行ってきました。そして現在、初の開発者カンファレンスの開催を目前に控えています。
3D 地理空間分野が進化を続ける中で、誰もがアクセスしやすく最新の学習コンテンツへのニーズも高まっています。私たちはこれに応えるため、以下のようなトピックに関するチュートリアルを順次公開していく予定です:
- リアリティモデリング
- AI 特徴検出器
- 3D Gaussian Splats
- ランタイムエンジンの構成方法
- パフォーマンス最適化
- 3D Tiles におけるメタデータの活用と拡張方法
また、コード例リポジトリとしての新しい Sandcastle の開発も進めています。これには IntelliSense (コード補完)やコードバリデーション(検証)、検索・整理機能の強化など、モダンな開発者ツールを備え、目的のコードをより簡単に見つけられるようになります。
さらに、継続的なメンテナンスの重要性も決して軽視できません。それはコミュニティとの約束であり、プラットフォームの原動力であり、将来のロードマップに新たなアイデアを生み出す源でもあります。
プルリクエスト のレビュー、ブラウザやゲームエンジンにおけるバグや修正への対応、GitHub やコミュニティフォーラムでの透明性と参加のしやすさを高めるためのワークフロー整備など、特に、iTwin PlatformやiTwin Captureの導入が進む今、透明性と参加しやすさの両立が一層重要です。私たちはこの分野への取り組みを、これからさらに強化していきます。
皆さんの声をお聞かせください
私たちCesiumは、人工環境と自然環境のためのデジタルツインを構築する開発者コミュニティを支える、オープンプラットフォームの強化と拡大を目指しています。そのために、Bentleyの技術を皆さんに届ける道を探るとともに、研究開発、オープンソースコミュニティ、業界との連携にも、これまで以上に投資していきます。
Cesiumは創業以来、常にコミュニティの声を羅針盤として歩んできました。そして今後も、皆さんのご意見を聞き続けたいと考えています。
どんな製品・機能・統合・バグ修正を望んでいますか?
iTwinや他のBentley製品の中で、優先的に統合してほしい機能はありますか?
対応すべきオープン標準や、注力すべきパートナーシップはありますか?
どんな小さなリクエストでも構いません。Cesiumやそのエコシステムに期待することを、ぜひお聞かせください。
ご意見は Cesiumコミュニティフォーラム で受け付けています。